都心からは1時間弱、埼玉県の春日部にあるPatisa(パティサ)は、シーシャ通の間でにわかに話題のお店。
「ダブルアップルを200回吸って味が染み込んだ木製シーシャがあるらしい」。
それをたよりに全国から煙好きやシーシャ屋さん関係者が訪れているとか。
まるでウナギ屋さんが江戸時代からつぎ足しているタレのような、煙欲をそそる秘伝の味を求めて、浅草から急行で40分、クレヨンしんちゃんの町、春日部までやってきたゾ!
色とりどりのトップやシーシャグッズが並ぶ店内
お店は駅から5分程度。駅の西口、少しさびれた夜のお店が居並ぶエリアにポツンとあります。
ソファ席とカウンター、そして1組分の小上がりがあり土曜の昼下がりでしたがこの日は混雑しておらず、のんびりと楽しむことができました。
料金はフリードリンク込みのチャージ500円とシーシャはすべて1300円。
店内には他のお店では見かけないタイプの、鮮やかな色合いのシーシャ機材が並んでいます。
トップやボトルのような機材の他、お家シーシャをしない人でも欲しくなるようなマウスピース類は、お祭りの露店を眺めているような気分になります。
席に着くとメニューの説明には、イラン人店長のキアさんが人懐っこくお話にきてくれました。
木製ステムはフレーバーごとに専用にして使い分け
噂の木製ステムは厨房を囲むカウンターの周りに何本も並べられ、お店の中でも目立っています。
金属製に比べると、一見、無骨でゴツい印象ですがそれぞれに異なる彫刻が施され、愛着がわくようなデザインです。
そして、それぞれのステムはフレーバーごとに専用で分けられており、ラベルが貼られていました。
この日の注文は、あまりほかのお店では見かけないライチ。
そして、他のチョコはあまりおいしいのはないけど、これは美味しいと勧められたチョコアイスクリームを注文しました。
MIXも対応はしてくれますが、キアさんからは「単品で味わってほしい」とのことで、こだわりと自信がうかがえます。
取り扱のフレーバーのブランドは、マレーシアのHOMEMADE(ホームメイド)が多いとのことです。
色鮮やかで目を引くデザインの機材
しばらくするとシーシャが席にやってきました。
まず目を引くのが、ボトルに施された切子グラスのような立体的な装飾と鮮やかなペイント。
そして木製のステムは、目の前に置かれるとひときわ大きな印象を受けます。
そして、明らかに大きいのがトップ。
謎のおっさん(誰だか聞くのを忘れた)が描かれ、湯呑やマグカップのような大きさです。
トップには、固めのアルミを1センチ程度へこませた形で張り、なんと炭は4つ。
1箱分のフレーバーが入りそうな大きなトップの中には10~12g程度が入っているだけで十分な空洞があり、そのため焦げないということです。
MIXに頼らない「単品の贅沢」
さっそく、ライチから吸ってみるとフルーティーで自然なライチの味。
煙を吸っているというよりは、ジュースを飲んでいるような感覚をおぼえるほど、違和感のないしっかりとした甘さです。
フレーバーから新たに生まれたライチ味の煙を、木製ステムに染み付いた味がマイルドに慣らしてくれているようです。
一般的に、単品フレーバーだと物足りなさを感じるがゆえにMIXに頼りがちですが、シンプルな味をじっくり味わうという贅沢さをここでは味わうことができます。
もう一本のチョコアイスクリームは、木製ステムではありませんが、最初から濃厚な煙と味を楽しませてくれました。
チョコは「焦げやすい」、また逆に「水に薄めた麦茶」のようになる、など単品ではハズレが多くMIX要員フレーバーという印象が強いものですが、口いっぱいに広がる煙とちょうどいい甘さを楽しめました。
吸い始めてしばらくすると、サービスでアイスホースをつけてくれました。
しっかり冷やされた多めの煙が口の中で広がり、それが徐々に溶けて甘みを増していくような感覚を楽しめ、満足度を高めてくれました。
木製ステムの一本一本が、じっくり育てられている専用のものなので、各フレーバーごと一本ずつしかないようです。
なので、常連ともなると、予約の時に「席空いてる?」ではなく、「ダブルアップルのステム空いてる?」となるとか。
楽しいシーシャトークは歴史からお店の話題まで
煙の味もさることながら、お店ではキアさんの細かい気遣いでシーシャを美味しく保てる上、楽しいトークで飽きることはありません。
キアさんは本場イランで2店舗を経営し、シーシャ歴は35年とか!?
それでも「日本では新人」と謙虚に語りますが、そのシーシャへの探求心は間違いなく本物。
シーシャの歴史として、発祥の物語や古来のフレーバーに炭を直接乗せる作り方や文化なども教えてくれます。
そして、日本の様々なシーシャ屋さんにもとっても詳しく、最近できたお店の名前や店を訪れた店長さんたちのお名前などもよく覚えているようでした。
シーシャ文化はライバルではなく仲間
お店は都心からやや距離はありますが、本格シーシャとシーシャの楽しいお話がここまでリーズナブルに楽しめてしまっていいものなのか、申し訳なく思ってしまうほどです。
しかし、それがアラブ商人の営業力なのか?気づくと木製ステムをお持ち帰りしてしまいました。
面倒見のいいキアさんは、購入を申し出るとステムを育てるコツや、ちょっとしたセッティングまでやってくれます。(ちょっと時間がかかるので、余裕のある時やシーシャが終わる前に注文しておくのがおすすめです)
買った後も「なんでも聞いて」とどこまでも丁寧です。
そんなキアさんは「シーシャの文化はライバルでなく仲間」と言っていました。
シーシャ関係者が、足しげく訪れるたびにシーシャの情報を惜しげもなく教えていき、そしてひたすら美味しいシーシャを提供し続けるキアさん。
その姿勢は、確実にそれぞれのお店の方たちのモチベーションやシーシャ愛を高め、ひいては日本のシーシャ文化をより豊かにすることに貢献しているのだな、と思いました。